「転院」で失敗しないために、知っておくべきリスク5つと正しい転院のポイント

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 これまで多くのがん患者さんと関わる中で「病院を移ろうと思うのですが…」という転院に関する相談をよく受けてきました。

 私は「まず慎重に考えてください」とお勧めしない派の意見を述べることにしています。
 なぜなら安易に転院を決め後々大変になった人たちを知っているからです。

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 今回は、転院を検討中のがん患者さんやそのご家族向けに「事前に知っておくべきこと(リスク)」と「正しい転院の仕方」についてまとめてみました。

【よくある転院の背景(2つ)】

 私のもとに転院のご相談に来られる方は以下の2つの理由で考えられていることがとても多いです。

1.主治医との不仲

 いま治療中の病院に何らかの不満を持っているケースです。主治医とそりが合わないとか、主治医を信頼できないとかです。
 時には患者と医師の仲は悪くないのに、患者の家族が主治医を好きになれなくて無理やり転院させようとする場合もあります。主治医との人間関係の悩みが1つ目のケースです。

2.うわさ

 がんの治療は手術が主流です。だから、「どうせ同じ手術を受けるなら腕の良いお医者さんに手術してもらいたい」という気持ちから転院を考える人たちがいます。
 また、家族・親戚たちが週刊誌や口コミ情報で「〇〇病院の〇〇先生が神の手らしい」とか聞きつけると患者を説得して転院を考えさせようとすることもあります。
 「より良い医療を受けたい」という気持ちが転院を考える背景があるといえます。

 もちろん、不仲・うわさ以外にも転院を希望する背景はありますが、この2つが私の受けた相談の中ではとても多いです。

【ありがちな転院の仕方】

そして、ありがちな転院の仕方は次の2つです。

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1.セカンドオピニオン

 今の時代は主治医から今後の治療方針を聞いたあと、他の病院の医師に「あなただったらどういう治療方針ですか?」と聞き確認するセカンドオピニオン外来という制度があります。
 だからこの仕組みを利用して移りたい先の病院でセカンドオピニオンの予約を取り、その病院の医師から意見を聞いている最中に「そちらに転院させてほしい」とお願いする患者がいます。
 しかし多くの病院ではこのセカンドオピニオンという制度はあくまで意見を述べるまででオピニオンを聞いたら、いま治療中の病院で主治医と相談してくださいとしています。そんなことは知らないという患者さんもいるかもしれませんが、制度に反して転院を目的に利用するケースです。

2.外来で受診

 セカンドオピニオン外来では転院が難しいと知っている患者さんの中には、たとえ入院中でも紹介状もなく他の病院の初診外来に行き、そのままそちらの病院に移ろうとする人がいます。
 極端な例ですがいまの病院で手術を受ける前に抗がん剤治療でがん病巣を小さくするという手順を踏んでいて、抗がん剤により髪の毛がなく、明らかに体調が悪い状態なのに他の病院で初診患者として診てもらい、そのまま入院でできたらよしと挑戦する人すらいます。かなり無理があるし受け入れ側の病院が気づかないことはないと思うのですが。

【転院を考えるうえでの5つのリスク】

 相談に来られる患者さんやそのご家族の方に私がお伝えする「事前に知っておくべき転院リスク」は以下の通りです。

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❏ 漂流患者

 希望の病院に移れるかどうか解っていないにもかかわらず「もう今の病院とは縁を切ってきたから、こちらでお願いします」という大胆なことをする患者・患者家族がいると医師から聞いたことがあります。
 これは明らかに順序が間違っていますし、もし別の病院で受け入れてもらえなければどうするのかとても心配になります。きちんとした順序を踏んでいないために病院の間で漂流した患者のようになってしまったケースがあります。

❏ 合併症

 転院した先の病院によっては、一部の内科領域の診療科がない場合があります。もし発症した合併症がまさにその内科領域の場合、別の病院で治療を受けざるを得ません。具合が悪いときに別々の医療機関でそれぞれの治療を受けるとなると身体的な負担は小さくないはずです。
 だからこそ転院と転院先の病院選びは慎重にすべきだと思うのです。

❏ もっとそりが合わない

 いまの病院の主治医とそりが合わない(信頼できない)という理由から安易に転院したら転院先の医師の方がもっとそりが合わなかったというケースです。ただでさえ病気で辛いとき、人間関係の悩みが悪化していくのはとてもつらいと思います。
 がん治療中の人は精神的に不安定なことが多いです。私自身、当時そうでした。だからこそそれを自覚して、一時の感情に任せて誤った判断をしないように気を付ける必要があると思います。

❏ 治療が遅れる

 どうしても〇〇病院で手術を受けたいとして、いまの病院で今月手術予定があるのに転院し、転院先ではずっと先の日程の手術となり、その間に具合が悪くなってしまった人を知っています。がんの種類にもよると思いますが基本的に時間とともに進行していくことが多いはずです。早く治療した方が良いにもかかわらず転院して治療が遅れ、がんが進行したり、転移したりすることのないように慎重に見極めてほしいと思います。

❏ 希望の医師による執刀とならない

 〇〇先生が神の手などと言ううわさを信じて転院しても必ずしもその先生に手術してもらえるかどうかは解りません。例えば、診療科の長たる〇〇部長とか〇〇教授という肩書の医師は様々な仕事をしていて手術に割く時間があまりない場合もあります。しかも手術には監督として立ち会い執刀は比較的若い医師というケースもあります。

【転院を希望する理由の説明】

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❏ 不仲だから

 今いる病院の主治医と上手くいかないために(信頼できないために)そちらの病院に行きたいと言ったら、相手の医師はどう感じるでしょうか。
 その主治医ではなく目の前の患者に問題があるのではないか?と思う医師もいるはずです。なぜなら実際のところがわからないのですから。その上で、もしこの患者が変わった人でトラブルメーカーだとしたら積極的にその患者を受け入れたいとは思わないのではないでしょうか。

 またお医者さん同士は学会とか、同じ大学とか、以前の職場が同じ病院だったなどのつながりで昔からだれがどの病院にいるのか解っていて、知人・友人関係だったりする可能性もあります。
 そうなると〇〇先生に問題があるとは思えないからきっとこの患者に問題があるのだろうとなりかねないのです。主治医との不仲を理由に転院したいというのは正直なところかもしれませんが、受け入れ側の病院にとって歓迎すべき理由にはならないと感じています。

❏ 腕が良いから

 知人の医師に「腕の良し悪し」の定義について聞いたら、逆に何をもって医者の腕の良し悪しとするのか?問い返されたことがあります。
 例えば、同じ手術をしたとしてA病院では7時間、B病院では5時間だとするとB病院が良い評価になるのか?と逆に質問されたのです。素人感覚だと時間が短い方が腕が良さそうに思えると答えたら、否、患者の身体の中の状況は人それぞれで、例えばリンパ節郭清手術の場合、時間が多くかかるのは患者の身体の中の癒着(ゆちゃく)が強くて時間がかかるのであり、医者の腕前の違いではないと言われました。それぞれの患者の身体の中の状況の違いにより手術時間に差が出るのだと説明され納得したことがあります。
 
 脳神経外科領域での内視鏡手術のように細やかな手術では手先の器用さがとても大事になるが切開してがん病巣を取る手術となるとそこまでの繊細さを求められないことが多いから神の手みたいなことは有り得ないと説明した医師もいました。

【正しい転院の方法】

❏ 紹介状

 やはり正しい転院の方法というのは、いまの主治医に病院を移りたいと伝え、希望する病院への紹介状を書いてもらうことに尽きると思います。希望する病院が決まっていないのであれば主治医と相談しお勧めの病院を紹介してもらうのがいいです。自分の病状を良く知っている主治医に紹介状を書いてもらい次の病院に移るのが患者本人のために一番良いと思います。

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主治医とそりが合わず不仲であったとしても、きちんとその旨申し出てお願いすれば紹介状を書いてくれるのではないでしょうか。

もし転院する理由が「あちらの病院の方がいいから」とは言いにくいのであれば、適当な方便をつかうのも一案かもしれません。

「(自分としてはどちらでもいいのだが)、家族・親戚がどうしてもあちらの病院に移ってほしいというので従わざるを得ない」とか、「今後のことを総合的に考えて家族でそう決めたのでお願いします」とか、主治医の心情を斟酌(しんしゃく)して方便を使ったらいかがでしょうかと個人的なアイデアを述べたこともあります。

但し、単に隣の芝を青くみて別の病院に転院するのは良くないと思います。でも、どうしてもそうせざる得ない場合は、以上のように主治医に紹介状を書いてもらうという王道が一番物事がうまく運ぶと感じています。

本コラムの担当:5years代表 大久保淳一
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